喜多にある建部山(たてべやま)には建部城がありました。
その昔、一色(いっしき)氏が城主として治めていた室町時代のこ
建部山の中腹に屏風岩(びょうぶいわ)と呼ばれる、そそりたった
その下の方には、深い洞窟がありました。
ある日のこと村の若者が、樒(しきみ)を取るために建部山に登っ
しきみは仏教でお供えに使われるため、お寺などからよい値で買っ
しばらくしきみを取り、かごに入れていましたが、ふと屏風岩あた
若者「なんと珍しいことだろう、蛇があんなにじゃれ合っているな
それぞれ紅に黒に白と鼠色の縞模様で、しばらくじゃれ合う様子に
若者は再びしきみを取ってかごに入れていましたが、疲れてきたの
すると、屏風岩の方に娘が一人立って、こちらをうかがっているの
若者「なんと美しい娘だ、紅の着物を着ていて、このあたりでは見
若者は夢ではないかと目をこすってみましたが、娘は消えることも
そこで、おそるおそる娘の方に登って行きました。
すると、娘はにっこりとほほ笑んだと思ったら、洞窟の方へ向かっ
若者は娘に
娘「おいで、おいで。」
と、呼ばれた気がして急いで後を追い洞窟の入口まで来ると、中を
若者「何だ、夢でも見たのか誰もおらぬ。ただ真っ暗で気味が悪い
若者はそう言うと引き返してしきみを入れたかごを担ぐとさっさと
まだ嫁のいない若者は、思い返してみて美しい娘が忘れられず、そ
気になった若者はあくる日、村の人に昨日の出来事を話しました。
村人「あんな気味の悪い洞窟に人など住んでいるはずがない。」
村人「きっと狸にでも化かされたのじゃあないのかい。」
そう言って誰も若者の話を信じてくれませんでした。
若者はもう一度確かめたい、と思っていましたが、畑仕事や村作業
そのうち村人の間で屏風岩の洞窟に誰かいるとの噂が立ちました。
村人「それは大男らしいぞ。」
村人「いやいや美しい娘だということだ。」
村人「でも、白髪のおじいさんと言う人もいるそうだ。」
そんなうわさ話を聞くと若者はますます気になり夜もろくに眠れな
ある日若者は居ても立ってもいられなくなり、とうとう畑仕事のあ
するとそこには前のように三匹の蛇がたわむれておりました。
蛇はしばらくすると洞窟の方へ行くので、若者はすぐに後を追いか
娘「こっちよ、こっち。」
若者はまた娘に呼ばれた気がして、洞窟に着くと恐る恐る中をのぞ
若者「なんだろうあの光は、私を誘っているように見える。」
蛇の瞳の明かりと気付かない若者は、今度は勇気を振り起こして娘
明かりは誘うようにどんどん奥の方に入って行くので、若者は後を
ぽとりぽとりと岩から滴が落ち、足元はぴちゃぴちゃと水音がしま
若者「うやあ!冷たい。なかなか追いつけないぞ。」
若者は寒気を感じながらも、そろりそろりと明かりを追って進みま
後を振り返るとかすかに入口の明かりが見えます。
若者「どうやらずいぶんと入り込んだようだぞ、引き返すのなら今
それでも明かりを追って若者は更に奥に進みました。
ふと気が付けば、若者は周りを蛇に囲まれているのでした。
しばらくして、村人たちは姿の消えた若者のことで噂話をしていま
村人「わしは若者が山に登って行くところを見かけたが、どこへ行
村人「わしがしきみを取りに行ったとき、洞窟のところで大きな蛇
村人「わしも柴刈りに行ったとき見たぞ、黒い縞と、紅い縞じゃっ
村人「そんなら若者は蛇にでも取りつかれたんじゃろうか?恐ろし
村人はそんな恐ろしげな噂話しをして、中に入ると蛇になるのでは
【PODCAST】2023-2-24 OA 第38回 「洞窟の蛇」 #丹後富士 #建部山 #喜多
番組名:ラジオ散歩★舞鶴ウォーカー
更新日:2023年02月24日