むかし、むかし、年貢をお米で納めるなど、お米がお金と同じように扱われていたころのお話です。
河辺(かわなべ)と言う村のある農家に、おたかさんと言う名の,お米を売り買いしている女の人がいました。
おたかさんの住んでいる土地は昔からお米作りが盛んで、田んぼが深く、土が肥えていて、米がとても美味しいと評判でした。
しかし、おかたさんは、村ではケチで有名でした。
おたか「自分の物は自分の物、他人の物も自分の物。」
おたかさんは昔からそう言ったような生き方をしている人でした。
そうして大きな蔵を3つも持っていましたが、蔵に物を入れるのは好きだが、蔵から物を出すことが大嫌いと言う筋金入りのケチでした。
そんなおたかさんの所へ、村の人がお米を度々借りに来ます。
村①「おたかさん、今度の祭りによーけ米がいるんで貸してくれんかのう。」
おたか「そりゃーなんぼでも盛大にやったらええ、だけんどお米はきっちり返してもらうでのう。」
村②「わしの娘が結婚するので、ようけ持たせてやらないかんから、かしてくれ。」
おたか「そりゃあ、めでたいのう。でもちゃ~んと返してもらうでな。」
おたかさんはお米を貸すときは小さなマスで計って出し、返してもらうときは大きなマスで計ります。
おたか「これは、貸し賃をもらっているだけ、それもちょっとだけやがな。」
村の人たちは抜け目のないことだと思っていても、困っているので仕方なく借りに来ます。
そんなことをしているものですから、おたかさんの蔵にはお米はたまる一方です。
また、町から米の商売人が来ても同じように小さなマスと大きなマスを使い分けていました。
ですから商売人とマスの使い分けで言い争いになることはいつものことでした。
村①「おたかさんよ、貸すときと返すときのマスを同じにしてくれんかね。」
おたか「何を言っとるだ、これはわしの取り分だ、変えるわけにはいかんよ。」
村の人たちが借りるときのマスと返すときのマスを同じにしてほしいとおたかさんに何度も頼みましたが、おたかさんは全く聞き入れてくれません。
おたか独り言「苦労して作った川辺のお米だ、誰れが来ても安売りなぞできねえ。」
おたかさんは、川辺のお米に誇りをもっていました。
でも、そうとは知らないので、とうとう村の人たちの怒りが爆発してしまいました。
村①「おたかさんは何度言っても聞く耳もたんようだ、あのやり方にはもう我慢が出来ねえ。」
村②「そうだそうだ、一度みんなでこらしめてやらんとならねえな。」
村の人たちはそんな相談をして、ある夜のこと、おたかさんの屋敷にクワや竹やりを手にてにする人たちが集まってきました。
おたかさんは驚いて屋敷の中や外を逃げ回りましたが、最後には米蔵に追い詰められてしまい、蔵の中の俵に入って隠れていたところを、探すために突ついていた竹やりが、おたかさんの横腹に刺さってしまい、大けがをしてしまいました。
おたかさんはそのけがが原因で、寝込んでしまい、とうとう死んでしまいました。
おたか「みんなの苦労も気付かない私が悪かった。お米はみんなで分けてくれ、腹いっぱい食うて、それでお腹が痛くなったら、私が治してやる。」
おたかさんは反省してそう言い残すと息を引き取ったそうな。
村の人たちはやり過ぎた気持ちもあり、おたかさんを哀れんで、お米の代金でお堂を建てて「おたかやしき」と呼んで、たたりが無いようにねんごろにお祈りしたそうです。
もしお腹が痛くなったらおたかさんのお堂にお参りすると、不思議なことに、お腹の痛みが治ると言われているそうです。
2023.10.27おつぎ