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【PODCAST】2024-2-23 OA 第50回「送り狼」

番組名:ラジオ散歩★舞鶴ウォーカー
カテゴリ:ポッドキャスト, 舞鶴の歴史・民話
更新日:2024年02月23日

むか~しは、犬を飼う人はたんまにあったそうじゃが、首輪もなく放し飼いのようなもんじゃったけ、子犬が産まれてもけっこう山に迷い込んで、帰ってこなくなることもあったんじゃそうな。
そんな子犬は、なんと狼が乳を飲ませてちゃんと育てとったそうな。
そんで、子犬は大きくなっても、狼の群れで一緒に暮らしよったんじゃよ。
そんな狼は、お産が重たくて難儀をするんじゃそうな。
狼も信心深いのかお産が軽くてすむように、ここらの神社では一番信仰の厚い大川さんに願をかけるのやて。
人間のお百度参りをまねたのか、狼の世界にもお百度送りなんぞがあるやもしれんのう。
狼がそこまで信心する大川さんは、もう人からもごっう人気があって、田辺の城下からも、大江からも、由良からも、どこからでもたくさんの人がお参りにきたそうな。
二、三人で来る人もあれば、一人で来る人もあったんじゃ。
そんなどの人でも、大川さんに参ったら、帰りは狼がそっと隠れて送って行ったそうな。
村人①「どおもさっきから気になっとったんじゃが、狼が送っとりゃあせんか?」
村人②「やはりそう思うかい、どうも送っとるようじゃ。」
村人①「そんならここらでひと休みしようかいのう。」
村人②「・・・おお、どうやら狼も座り込んで、ひとやすみしとるようじゃ。」
そんな風に、どうも狼が送って来るなと気付いたら、しばらく歩いて休憩すると、狼も同じように、隠れたところで休憩しとるそうな。
しばらく休んでまた歩き出すと、10メートルくらい離れて、隠れるように付いて来るのだそうな。
村人①「知っとるかい?狼はわしらのことを見守ってくれているのじゃよ。」
村人②「聞いたことあるが、遠くならよいが、近寄ってこられたら、いくらなんでも恐いのう。」
狼が送って来ると分かったらゆっくり休み休み歩かないかんのやで。
もし、走って行ってつまづいてこけようもんなら、狼が起こさないかんと思って、がばっと駆け寄って来て、ぐわっとくわえようとするんじゃよ。
前に、おじいさんが話しとったんじゃが、近くの家のおっさんと大川参りして、帰って来ることがあったときに、長話しておって遅そうなって、まわりも暗ろうなってしもうたんじゃと。
おっさんはどえりゃああわて者で、帰り道に狼が送ってくるのに気づき
じいさん「狼が送って来るで。」
そう教えると
おっさん「そんな!恐ろしい!!」
と、一目散に走り出したそうな。
じいさん「こけたらがばっとくるで。」
と大声で言うたんじゃ。
おっさん「どこや、どこからがばっとくるんじゃ。」
そう言って大慌てで引き返して来るもんで
じいさん「こけたら起こそうとして、がばっと来るんじゃ。」
そう言ったんじゃが
おっさん「そんな!いくら助け起こそうとしても、がばっとこられたら恐ろしいわい!!」
と言うと走って行ってしもうた。
じいさん「こけたらいけんぞ、こけたらがばっとくるで!」
ひとりになったおじいさんは、こけたらいかんから、そろりそろりと歩いて狼に送られて帰ってきたそうな。
とにかく狼が送って来ると分かったら走らんことじゃ。走ったらこけるに決まっておる。
こけたら起こそうと思って、狼ががばっ!と来るのじゃけえ。

(作:2024.02 おつぎ)

 

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