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【PODCAST】2024-6-28 OA 第54回 乳神さま(ちちかみさま) 池内(いけうち)

番組名:ラジオ散歩★舞鶴ウォーカー
更新日:2024年06月28日

池ノ内下(いけのうちしも)公民館の正面右手には、大川神社やお稲荷さまだけでなく、弁財天や天王社、妙見社、山の神さまなどが祀られています。 その中の弁財天さまが、別名乳神(ちちかみ)さまと呼ばれる訳にはこんなお話が伝わっています。 池ノ内下から綾部市の於与岐(およぎ)に行く道に 丹波峠(たんばとうげ)を通る道があります。 於与岐には修験道の行場である金峰神社(きんぷじんじゃ)がある弥仙山(みせんさん)に向けて行き交う人も少なからずありました。 ある日、夜が明けないような早い時間に、ひとりのきこりがこの道を於与岐に向けて歩いていました。 樵「早起きは三文の得、こんなに早くから働いたらきっといいことがあるに違いない。」 周りは朝霧で見通しはよくありませんでしたが、きこりはずんずん歩いていきました。 きこりが峠の前まで来ると。 赤坊「おぎゃーおぎゃー・・・。」 赤ん坊の声が聞こえてきます。 どうやらお腹を空かせてお乳を欲しがって泣いているようです。 樵「はて、こんな早い時間に山の中で赤ん坊が泣いているなんてかわいそうに、母親も難儀をしているのではないだろうか?」 赤坊「おぎゃーおぎゃー・・・。」 気になったきこりが泣き声のするほうに近づいて行きました。 朝霧で周りがよく見えない中、注意深く泣き声のする方に近づいていくと、ふと、泣き声がしなくなりました。 樵「おや、どうしたことかいな。」 ますます気になったきこりがさらに近づいていくと、大きな岩の間に赤ん坊が包まれるようにいました。 周りにはお母さんらしい姿は見当たりません。 樵「はて、赤ん坊は泣き止んでいるようだが、お母さんの姿が見えないぞ、なんぞあったのかいな?」 おかしいと思いきこりが目を凝らして見ると、白っぽい岩の隙間から突然白いものがこぼれ落ちてきました。 それは赤ん坊の顔まで岩を伝い落ちてくるので、赤ん坊はしきりに吸い込んでいるしぐさでした。 樵「なんと奇妙な、まるで赤ん坊がお乳を吸うて泣き止んだようではないか。でも、こんなところのお乳が出るわけがない、これは岩だろう?」 するときこりの言葉を打ち消すかのように、白いもやのようなものが段々集まって形を作っていき、やがてそれは神々しい天女さまの姿を現してきました。 天女「ふふふふふふっふふ・・・。」 ほほ笑みを浮かべた天女さまが胸元をまさぐるようにすると、白い岩の上に更に白いものがあふれ出てくるように見えました。 樵「なんだこれは!天女さまが赤ん坊に乳を与えているではないか…!そんなことがよくもまあ、あったもんだ!。」 きこりは驚いてしばらく目を凝らして見ていましたが、やがて天女さまはもやもやと赤ん坊と共に天に登ったかのように見えなくなりました。 我に返ったきこりはころげるように村に引き返し、見てきたことを村人に伝えます。 樵「あれは確かに天女さまだ、わしはこの目で見たのだ。こう、乳を搾り出して赤ん坊に与えとった。」 村女「あれま~、ほんまかいな。それは乳ち神さまだわいな。乳の出ん女の人が拝めばきっとご利益があるに違いない。」 そんなふうに、村じゅうどころか城下町まで噂が伝わり、村の人たちは行き交う人にこの話をし、この岩を大切に守り続けました。 お乳が出ないお母さんや出産を控えた女の人たちは、峠の近くにある岩まで行って安産や産後の乳の出をお願いするのでした。 心優しい村の人たちは、身重の女の人が危険を伴ってわざわざ岩まで行かなくてすむように、村の中に弁財天として天女を祀るようになったということです。

2024.6.11 おつぎ

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