FMまいづる 77.5MHz

トップページへ本文へ標準サイズ文字を大きくする

【PODCAST】2023-4-28 OA 第40回 庄屋の息子と大蛇(しょうやのむすことだいじゃ)(三浜:みはま) 

番組名:ラジオ散歩★舞鶴ウォーカー
更新日:2023年04月28日

三浜(みはま)の海岸の、すぐ沖にある二つの島の、小さいのが沖葛島(おきかずらじま)、手前の大きいのが磯葛島(いそかずらじま)です。
かずらじま神社は、今は小橋(おばせ)の宮山(みややま)に、氏神の若宮(わかみや)さんと並んで祭られていますが、昔は磯葛島にあり、村人は年に一度の祭りの日には、船に乗ってお参りしていました。
村人①「磯葛島へ行ったならば、その日のうちに再び島にあがると不吉なことが起こり生きては帰れない。」
村人たちは、古くから言い伝えられたこの掟を長らく守ってきました。
祭りの神主は代々受け継がれた小橋村の庄屋が務めます。
神器(じんぎ)の「やなぎのまな板(いた)」と「金のまな箸(はし)」を用意して、 「オオアナチノミコト」と「スクナビコナノカミ」の2人の神に海の幸を差し上げてお祭りを行なう習わしとなっています。
 江戸のはじめ、その庄屋に五郎兵(ごろべえ)という者がおりました。
五郎兵は祭りの日に、どうしても出かける用事ができました。
そこで村の老人たちが、庄屋の家に寄り合いました。
村人②「祭りの神器が扱えるのは庄屋の跡継ぎの決まりだ。」
村人①「そんなら、まだ若い五郎丸だが、父親の代わりに神主の代役とすることに決まりだな。」
そうして庄屋さんと村人たちは息子の五郎丸を神主に決めました。
祭の日、大漁旗をはためかせた船の舳先に神器を持った五郎丸を立たせて、磯葛島へ向かいました。
そして神事の奉納も滞りなく終わると、村人は飲めや歌えの酒盛りを始め、踊り出す者がいたほどに盛り上がりました。
村人②「庄屋さんの代役を務めた、お前さんの神主役は立派だったぞ。」
そう村人たちは口々に五郎丸をほめたたえたのです。
五郎丸はいい気になりどんどん盃を重ねて、すっかりお酒に酔って帰って来たのでした。
しばらくして酔いが醒めると、ふと我に返り
五郎丸「あれ!あれ!あれ!しまった、大変なことをしでかしてしまった。」
祭りに使った「やなぎのまな板」と「金のまな箸」を島に置き忘れてきたことに気が付いたのです。
五郎丸「大切な神器を忘れてくるなんて。信じて任せてくれたおとうに顔向けできない。」
母親「なんとまあ!酔ってそんなていたらくなんて、なんと申し開きしたものやら。」
五郎丸「私が呑みつけないお酒を飲みすぎたからです。自分で何とかします。」
母親「でも、村の掟があったはず…。」
村人①「なあ~に、神主の大役を立派に務めた五郎丸なら、神様もおこりはしないだろうよ。」
村人たちも、その日に二度上陸してはいけないという掟を破ったらどうなるか見たことがないので軽く考えたのです。
五郎丸はそうして母親が見守る中を、磯葛島めざして一人で舟を一心に漕ぎ出しました。
じきに島に着き、五郎丸は「やなぎのまな板」と「金のまな箸」を舟まで運び込むとホッと一安心し、つかの間休んでから村をめざしてゆっくりと舟を漕ぎだしました。
そのとき、一天にわかにかき曇り雷鳴がとどろいたかと思うと、黒々とした雲が空一面をおおいました。
五郎丸「困ったぞ、こんなに急に天気が変わるなんて油断していた、急いで帰らねば。」
そのとき、島の方から、目から稲光りのような光を発し、口からは雷鳴ほどの勢いの息を発する大蛇が現われました。
その姿は、たとえようもなく恐ろしく、大蛇が海に入ると、海は大波となって白いキバを立てて、舟を木の葉のようにもて遊びました。
五郎丸はなすすべもなく、舟もろとも大波にのみこまれてしまいました。
母親「ああ!五郎丸…、まだ若いのになんてむごい、私が止めなかったばっかりに…。」
浜で待っていた母親は、どっとその場に泣き伏しましたが、やがてどこへともなく姿を消してしまいました。
何日かたって、いつも使っていたツゲのクシが浜に打ちあがったことで、悲しみのあまり母親が海へ身を投げたことがわかったそうです。
村人たちは、この様子を見て神様のしうちを恐れ、このときから、磯葛島へのお参りをやめてしまいました。
そして何年か経つうちに、磯葛島のお社は朽ち果ててしまったそうです。
 それから後、村人が集まって話し合いをしました。
村人①「海の神さまを祭るお社がなくては、海で亡くなった者を弔うこともできんわい。」
村人②「それに、神器が海に飲み込まれてしまったが、お社を建てたら戻って来てくれるかも知れんのう。」
そうして、村の氏神様のとなりにいそかずらじま神社を再び建て、祭りの神主はそのつど村人の話し合いで決めることになったのです。
五郎丸と神器を飲み込んだ若狭の海は、ときとしては大蛇の牙のような白波をたてることがありますが、普段は五郎丸の霊をなぐさめるように穏やかです。

2023.3.21 おつぎ

エピソード

MP3を聞く